SESとは?メリット・デメリットやフリーランスエンジニアとの違いを解説

SESとは?メリット・デメリットやフリーランスエンジニアとの違いを解説

IT業界には「SES(システムエンジニアリングサービス)」という形式で働いているエンジニアがいます。興味はあっても、他の働き方との違いが理解できていないことから、挑戦したい気持ちに蓋をしているエンジニアもいるのではないでしょうか。

SESに関する理解を深めることで、転職時やフリーランスとして案件を獲得する際にもミスマッチを事前に防ぎ、自身の理想に近い働き方を実現することが可能です。

こちらの記事では、そもそもSESとはどのようなものかを解説します。SESのメリットやデメリット、優良なSES企業を見つけるポイントなども解説しているので、興味のある方はぜひ参考にしてください。

監修者
齋藤 宏幸
齋藤 宏幸 株式会社コーボー HR顧問

IT×人材分野で業界トップクラスの「レバテック」を提供するレバレジーズ株式会社の創業メンバー。創業当初5名→1,000名規模までの企業成長に携わる経験を有する。1,000名以上のエンジニアキャリア相談の実績や、在籍中に身に着けた営業力と組織構築力を活かし独立。現在では営業から人事コンサルタントまで複数社の発展に尽力。株式会社コーボーではエンジニア専任のキャリアアドバイザーから人事顧問を担当している。

執筆者
テックタレント編集部
テックタレント編集部

テックタレントフリーランスは、株式会社コーボーが運営するフリーランス向けの案件情報メディアです。エージェントサービスでは、フリーランスの働き方を応援するパートナーとして、案件提案から単価交渉、契約業務、参画後のフォローまで無料サポートを提供しています。はじめてのフリーランスの方もお気軽にご相談ください。

目次

SESとはIT業界における「契約形態」の一つ

準委任契約 請負契約について

SES(System Engineering Service)とは、IT業界における委託契約の一つであり、エンジニアの労働力を提供する契約形態です。エンジニアを派遣されたクライアント側は、提供されたサービスへの対価として報酬を支払います。労働力を提供する方法としては、SES企業に属するエンジニアが、クライアント先に常駐して業務を行なうのが一般的です。

IT業界では、SES以外にも響きが近い「SIer」という言葉を聞く機会があるでしょう。SIerはシステムの開発、運用、保守など、サービスや事業を一括して請け負う企業を意味します。SESは技術者の労働力、SIerは成果物(システムの納品)によって報酬を得るという違いがあることを覚えておきましょう。 

他の契約形態としては「請負契約」「派遣契約」「委任契約」といった言葉も耳にする機会があるでしょう。請負契約は、仕事の完成(成果物を納品)を目的とした契約形態です。

派遣契約は、SESと同様に労働力を提供する目的の契約形態で、発注先から指示を受けながら派遣社員として業務を遂行します。派遣形態は、登録型(一般派遣)と、派遣会社がエンジニアを正社員または契約社員として雇用している常用型(無期雇用派遣)の2種類に分類されます。なお、登録型の派遣契約では、同じ派遣先に3年以上勤務することは認められていません。

委任契約もSESと同様、労働力を提供する目的の契約形態です。委任契約は法律行為が含まれている場合に結ぶ契約形態で、エンジニアのように法律行為を行なわない場合は「準委任契約」として締結します。

エンジニアがSESとして働くメリット5つ

エンジニアとして活躍する契約形態は多様なものですが、SESとして働くメリットはどのようなものでしょうか。ここでは、エンジニアがSESとして働くメリットを詳しく紹介します。

メリット1 大きな案件に携われるチャンスがある

大規模なプロジェクトではさまざまなスキルが求められるため、自社エンジニアでは対応しきれない企業はSESを活用するケースが増えています。エンジニアの育成コストや雇用するコストをかけずに要件に沿った即戦力人員を補強できるSESは、大規模な案件を扱う企業にとって不可欠な存在の一つといえるでしょう。

SESのエンジニアなら、大手企業が受注した大規模プロジェクトに携われたり、これまで携わることが実現しなかった大手企業や話題の成長企業に常駐できるといった機会が期待できます。

メリット2 人間関係に悩まされることが比較的少ない

職場環境は、異動や転勤、転職する機会がない限り、簡単には変えられません。そのため、人間関係で悩み、ストレスを感じるようになってしまっても、有効な解決法が見出せずに、よりストレスを溜めてしまう環境が存在します。SESという働き方の場合は、携わっているプロジェクトを抜ければ新たな環境での業務となり、人間関係が固定されないというメリットがあります。

メリット3 長期間・長時間にわたる残業が少ない

システム開発などの業務では、納期までに成果物を納品する必要があります。そのため、納期前は残業が多いイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。一昔前はSESでも残業を強いる環境が横行していました。しかし現在ではコンプライアンスの意識が高まっており、基本的に長期間、長時間にわたる残業を強いられるようなことはなくなってきました。

なお、SESは労働力や技術力を提供する契約であり、成果物を納品する契約とは異なります。そのため、納品に伴い契約違反と判断されたり責任を問われたりする心配はありません。

メリット4 身に付けられるスキルや経験の幅が広がる

SESエンジニアは、さまざまなプロジェクトに参画する機会が得られます。これまではコーディングやテストなど、下流工程を中心に経験してきた人でも、現場経験や自学習などからスキルアップを図り、ポートフォリオを充実化していくことで、簡易的ではありませんが、要件定義や設計など、徐々に上流工程にも携わるチャンスが生まれていきます。

また、システム開発のプロジェクトではさまざまなスキルが求められることも多く、自身とは異なるキャリアやスキル、能力を持った人たちとも協業していきます。成長意欲と自学習を元に、SESを上手に活用することでスキルや専門性向上、志向性にあった開発案件への参画に繋げていくことができます。

メリット5 企業とのつながりと成長機会が増える

前述のように、さまざまな人たちと協業するプロジェクトから、エンジニアを中心に企業とのつながりを持てていくことも魅力の一つです。さらに常駐先での開発実績を積み上げて評価されていくことで新たな成長機会や役割を担い、スキルや単価アップなども期待できます。

エンジニアがSESとして働くデメリットとは

SESのメリット・デメリット双方を踏まえて選択しよう

SESとして働く場合は、デメリットになり得るポイントも理解しておくことが大切です。
ここでは、SESとして働く上でのデメリットやリスクについて解説します。

帰属意識が薄れていってしまう

SESとして働く場合は、基本的に客先常駐で業務を行なう性質上、自社に戻る機会は面談や定例会などに限られてきます。そのため、自社社員と交流を深める機会がなかなか得られず、面識のない社員がいるといった状況も考えられるでしょう。

また、自社に出社する機会が少なくなることにより、正当な評価を受けられている実感が湧かないという不安な一面もあります。正当な評価を受けている実感がなければ、将来のキャリア形成や年収アップにも不安は波及し、離職につながる可能性があります。

帰属意識の高い状態で業務を続けるためには、このような課題を解消できるような対策を講じているSES企業に所属することも大切です。自身で探すのが困難な場合は、転職エージェントにフリーランスの方も専門エージェントに相談することをおすすめします。

システムの完成まで携われないケースあり

大手SIerなどが受注した大規模なプロジェクトは、案件を細分化して下請けの中小企業に発注するのが一般的な流れです。そのため、携わっているプロジェクトは大きな案件の一部であるケースも珍しくありません。

システムやソフトウェア開発に携わったとしても、完成形を見ることがかなわず、そのまま契約が終了することもあります。自身が携わったプロジェクトの全容が把握できない状態で、業務を遂行する際、何かとモチベーションが低下する可能性があるでしょう。

また、プロジェクトが大きいほど細分化され、携わるエンジニアも多くなります。そのため、自身に割り振られる業務の領域がより限定的になることも想定されます。さまざまな経験を積みたいエンジニアにとっては、やりがいを感じづらいかもしれません。このような場合、案件を一定選択することが可能な「SES企業」に所属している状態が望ましいです。フリーランスであれば、契約更新時に新たな案件先へのステップアップも図っていくことが可能です。

給料水準が安価な傾向

IT業界では、二次請け、三次請けと、下請け構造が常態化している状況です。大手企業が案件を受注し、中堅企業へ仕事を割り振ります。それを受注した中堅企業は、受注した案件をさらに細分化し中小企業に発注する流れが一般的です。このプロセスでは中間マージンが発生するため、最終的に現場で働くエンジニアの報酬は少なくなります。

近年では、そのような構造的な課題をビジネスチャンスとして捉え、商流適正化を図り、高単価を実現したり、クライアントの稼働単価と連動した報酬制度(単価連動型の報酬制度)を整備しているSES企業も増えています。フリーランスでの契約もしかり、水準以上の報酬を得られる可能性が高まっているといえます。

年齢によって不利になる案件

SES企業が受注する案件のなかには、経験の長さや高いスキルがそれほど求められないものもあります。これらの案件は、未経験者や若手のエンジニアを育成する目的で受注しているケースが多いため、ある程度の年齢を重ねているエンジニアは携われない可能性があります。

少しでも多くの案件に携わりたい場合は、日頃から向上心を忘れずにスキルを磨き続けることが大切です。スキルの高いエンジニアはさまざまな現場で需要が高いため、案件が少ない場合でも優先的に声をかけてもらえます。

スキルアップまでに期間を要する可能性

前述のように、大手企業が受注した大規模なプロジェクトは、細分化して下請け企業に発注します。そのなかには下流工程のフェーズのみ、あるいは上流工程が完了している案件もあることを理解しておきましょう。

実際に若手のエンジニアが初めて担う作業は、簡易的な実装やテストのみといった状況があります。下流工程も重要な業務ではありますが、さまざまな経験を積んだり、スキルを磨くことを期待しているエンジニアにとっては、少々物足りなさを感じるかもしれません。

SESで成長速度を上げていくためには、着実に現場で経験を積み、自学習と合わせながらポートフォリオを作っていくことで、スキルアップを図り、より専門性が高くなる案件先への選択肢を広げていくことが求められます。近年では案件を選択できる制度を取り入れているSES企業も増えているため、この点は上手に解消しつつ、メリット面を享受していくことも期待できます。

関連して、アーキテクト、マネジメントなどのキャリアパスを描いている場合は、受託開発や自社開発を行なっているIT企業に軍配が上がると考えられます。ただし、納期に追われる、会社によって待遇の差が激しいなど双方のメリット、デメリットを想定しておくと良いでしょう。

優良なSES企業を発見する6つのポイントとは

優良SES企業を発見するための注目ポイント

SES企業といっても、企業方針や環境はさまざまです。優良な企業を探す際に注目すべき要点をご紹介!納得のいく企業を見つけられるように理解を深めましょう。

エンドクライアントや元請け企業との直接取引が多い

SES企業の多くは、同業他社のSES企業と取引していることが多く、案件を受注することだけを考えればそれほど難しくありません。しかし、このままでは多重下請け構造の下流ポジションから抜け出せずに、やりたい業務に携わる機会が巡ってこない可能性が考えられます。

営業力の高い企業であれば、エンド企業や元請け企業と直接取引することが可能です。上流の案件や好条件の案件を獲得できることで、エンジニアはさまざまな経験を積んだり、スキルアップを目指したりできるでしょう。企業情報や求人内容を確認し、エンド企業や元請けとの取引に強みがあるかを確認しましょう。

人事評価制度が明瞭であること

SES企業のなかには、明確な人事評価制度を設けていない企業が存在します。そのような企業に就職した場合は、自身の成果を見てもらえずに、継続的な昇給やキャリアアップがなかなか実現しないことがあります。

評価制度の基準が明確ではないと、公平性や納得性を図りにくく、所属する会社での将来像をイメージしにくい状態を招きます。結果、不満は募り、モチベーションは下がり、離職にも通ずるものです。適切にキャリアや成長していきたいエンジニアは面接時に評価制度の詳細も確認することをおすすめします。

給与や賞与の設定が適正か否か

どれだけエンジニアという仕事が好きでも、仕事内容に見合わない報酬が続けば、モチベーションを維持するのは困難です。エンジニアやエンジニアの技術を大事に思っている企業であれば、給与やボーナスも納得性のある仕組みで反映されていくでしょう。

給与や賞与(ボーナス)は、その企業がどれだけ安定しているのかを見極める基準の一つともいえます。営業力や技術力が高く、継続的に利益を上げられている企業のほうが、社員への還元率を高められるからです。

この点、SESではお客様からの単金を元に報酬制度を確立している会社がおすすめです。自身の開発実績、スキルアップ、それらお客様からの評価が単金に反映され、一定比率で還元される仕組みではないと納得性を醸成するのは困難ともいえます。

福利厚生が充実している点

福利厚生は、社員の働きやすさに直結する要素の一つです。そのため、どれだけ充実した制度を整えているのかを確認することにより、社員に対する姿勢や企業側の考えが読み取れるでしょう。

例えば、休暇制度が充実していることでリフレッシュする機会が得られたり、家族手当や住宅手当が充実していることで経済的なサポートを受けられたりする制度があります。SES企業の場合は、スキルアップ制度や資格取得支援などを整備していることが多いです。

ベテランのエンジニアが活躍している

エンジニアと聞くと若い世代が活躍しているイメージを持つ人もいるかもしれませんが、若い世代と同様にベテランエンジニアも活躍している企業は多く存在します。

ベテランエンジニアが活躍していると、SESで若手が成長する上でのマネージメントサポートや、技術ナレッジなどの共有による相互作用。マネージメント志向を持つエンジニアが居る場合、エンジニアチームの底上げが図れるなど重要な役割も担います。また、チームでの参画や一定の規模になると独占枠として好条件の案件獲得にも期待できます。

上場企業の場合はIR情報も確認してみる

IR(インベスターリレーションズ)とは、今後の展望や財務状況など、株主や投資家にとって必要な情報を提供する活動です。IRを確認することで、求人票では知ることのできない、業況や計画に対する戦略やその進捗、それらの将来性に関して理解を深められます。

IR情報は、企業のコーポレートサイトから確認できます。インターネットが普及しているため、企業情報を調べるのは容易です。多くの情報のなかには誤った内容が掲載されている可能性も考えられますが、IR情報は企業が出す一次情報のため、信頼できる情報といえるでしょう。

SESのデメリットとフリーランスエンジニアとの関係

一定のキャリアの方でSESとして正社員で働くかどうか決めかねている場合は、フリーランスとして働くことも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

そもそもフリーランスは、組織や企業に属さず個人で仕事を請け負う“働き方”のことです。企業と雇用契約を結んでいるSESのエンジニアは「労働者」、フリーランスは「事業者」であり、社会的な立場が異なるものです。

フリーランスとして働くメリットは、働き方の自由度が高く、自身のペースで仕事をコントロールできることです。SESにおいては、案件を自身で選べるため、興味のある案件に適切なタイミングで携わることや、正社員とは異なり単金をそのまま収入とするため、年収アップにも期待できるでしょう。

一方、デメリットとして挙げられるのは、どうしても生活が不安定になることや、営業活動を行う必要があったり、実績やスキルがダイレクトに単価に影響することです。また、エントリーシートの作成や確定申告など、報酬が発生しない業務にも継続的に労力を費やさなければなりません。

フリーランスエンジニアの将来性

フリーランスエンジニアの将来性と企業側のメリット

近年、ネットワーク社会の拡大とともに、IT市場は拡大し続けています。IT需要は増加しているにもかかわらず、エンジニアは不足しているのが現状であり、今後も続いていくと予測されています。

企業としてはIT人材を増やし、生産性を高めたいと考えるでしょう。しかし、エンジニアを雇用するとなれば、固定費や育成コストなどがかかるため、できるだけコストを抑えたうえで生産効率を高めるのが理想です。

この点、フリーランスエンジニアに依頼することで、企業は雇用にかかるコストを抑えて生産性を担保できます。また、企業の技術力ではこなせない作業があった場合でも、要件に沿った、技術力の高いフリーランスに依頼すれば、即戦力として支援してもらえるため、エンジニアの需要が高まるほど、フリーランスエンジニアの将来性は高いものといえるでしょう。

IT業界は、日々進化を遂げているため、古いものは淘汰されていく傾向にあります。そのため、日頃から最新技術を学び続けてスキルアップを目指すことこそ、将来性の高いエンジニアで居続けるための重要なポイントといえるでしょう。

まとめ:SESの理解を深めて適した働き方を見つける

SESという働き方は、スキルや経験の幅を広げたり人脈を増やしたいエンジニアに適しているでしょう。SESとして働くことを考えている際は、メリットだけでなくデメリットにも目を向けて、さまざまな視点から向き合い、課題解決に取り組んでいる会社やエージェントを探すことが求められます。

エンジニアとして活躍する方法としては、フリーランスという働き方も挙げられます。自身で契約し成果物を納品する体験や自由度の高い働き方など、正社員のままでは経験できない働き方があります。一方、さまざまな制約も課されるもの。双方の観点から総合的に判断して選択することやその選択を伴走、サポートしてくれるエージェントの存在は重要です。

監修者紹介

齋藤 宏幸

齋藤 宏幸

株式会社コーボー HR顧問

IT×人材分野で業界トップクラスの「レバテック」を提供するレバレジーズ株式会社の創業メンバー。創業当初5名→1,000名規模までの企業成長に携わる経験を有する。1,000名以上のエンジニアキャリア相談の実績や、在籍中に身に着けた営業力と組織構築力を活かし独立。現在では営業から人事コンサルタントまで複数社の発展に尽力。株式会社コーボーではエンジニア専任のキャリアアドバイザーから人事顧問を担当している。