フリーランスエンジニアの年収は何倍必要?正社員との手取り比較

フリーランスエンジニアの平均年収は600〜800万円台とも言われますが、手取りベースで正社員と比べると話は変わります。所得税・社会保険料をすべて自己負担するフリーランスが、正社員と同等の手取りを得るには月単価で1.3〜1.5倍の売上が必要です。この記事では経験年数別の月単価相場、独立の損益分岐点、独立前に確認すべきチェックリストを解説します。
- 監修者
-
- 執筆者
-
フリーランスエンジニアの年収が高い理由と手取りの実態
フリーランスエンジニアの報酬が高い理由は市場単価の仕組みが要因
フリーランスエンジニアの報酬は、給与というよりも、技術の需要と希少性によって算出される『技術調達コスト』と言えます。
経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)によれば、2030年には国内IT人材が最大79万人不足すると予測されています。この需給ギャップが単価上昇の直接的な要因であり、スキルの希少性が高い領域ほど市場単価も上振れします。
正社員採用であれば、紹介手数料(年収の約30〜35%)・教育コスト・福利厚生費がかかります。一方でフリーランスは、純粋な技術価値への対価として報酬が支払われるため、表面上の金額が高くなるのです。
フリーランス年収1,000万円の手取りは約520〜580万円
フリーランスと正社員の年収1,000万円は、手取りベースで大きく構造が異なります。
| 比較項目 | 正社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 社会保険料 | 会社が約半額負担 | 国民健康保険・国民年金を全額自己負担 |
| 消費税納税 | なし | インボイス登録後は売上の約2〜10% |
| 所得税・住民税 | 源泉徴収(年末調整) | 確定申告で自己申告 |
| 個人事業税 | なし | 一定所得以上で課税(税率3〜5%) |
| 事業経費 | 会社負担 | 通信費・機材・研修費などを自己負担 |
| 実質的な手取り目安 | 約720〜760万円 | 約520〜580万円(経費率・控除による) |
※ 試算前提:年収1,000万円・簡易課税適用・経費率15%。実際の手取りは経費の組み方や控除状況により変動します。
つまり、フリーランスとして正社員と同等の手取りを維持するには、おおよそ1.3〜1.5倍の売上が必要です。「額面より手取りで考える」ことが独立判断の大前提です。
正社員との年収比較:福利厚生・社会保険を含めた実質差
福利厚生を含めた実質差は年間160〜175万円
正社員の年収には、額面以外にも多くの経済的価値が含まれています。例えば年収600万円のエンジニアを例に試算すると以下のようになります。
| 項目 | 内容・根拠 | 金額換算(目安) |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金(会社負担分) | 標準報酬月額の約15%相当 | 約85万円/年 |
| 有給休暇(年20日) | 年間稼働日約245日の約8.2%相当 | 約49万円/年 |
| 退職金積立 | 給与の3〜5%が一般的 | 約18〜30万円/年 |
| 健康診断・福利厚生 | 年1回の健診+各種手当 | 約5〜10万円/年 |
| 合計(目安) | 約160〜175万円/年 |
つまり、年収600万円の正社員と同等の経済的価値をフリーランスが維持するには、約750〜800万円の売上が必要な計算になります。
病気・ケガで稼働できないと収入ゼロ
正社員には傷病手当金(標準報酬日額の3分の2を最長1年6ヶ月支給)があります。しかしフリーランスの場合は、稼働が止まれば収入もゼロです。民間の就業不能保険で備えることはできますが、月数千円〜数万円の固定コストが発生します。
確定申告・インボイス対応など、事務コストは年間24〜36万円相当
正社員であれば、保険や税金に関わる業務を会社が担ってくれることがほとんどです。一方フリーランスエンジニアになると、本業である開発以外の業務にも時間を使うことになります。
| 項目 | 正社員の工数 (年間) | フリーランスの工数 (年間) | フリーランスの具体的な 作業内容 |
|---|---|---|---|
| 確定申告・税務 | 約1〜2時間 | 約24〜36時間 | ・毎月の領収書整理、帳簿付け ・インボイス対応の請求書作成 ・確定申告書の作成と提出 ・消費税申告(インボイス登録者) |
| 請求・契約管理 | 0時間 | 約12時間 | ・毎月の請求書作成・送付 ・契約書のリーガルチェック ・注文書の管理、入金確認 |
| 保険・年金・納税 | 0時間 | 約12時間 | ・国民年金/国保の変更手続き ・住民税/事業税の納付(年4回など) ・納付書管理や支払いの手間 |
| 合計工数(目安) | 約1〜2時間 | 約48〜60時間 | 正社員より1.5週間分多く稼働することになる |
フリーランスエンジニアの平均的な時給単価(4,000円〜6,000円)でこの「事務工数(約60時間)」を換算すると、年間約24万〜36万円分、余計に稼働する計算になります。
- 正社員: 開発に100%集中できる環境が整備されている
- フリーランス: エンジニア兼「経理担当」兼「法務担当」兼「総務担当」を一人でこなす必要がある
【経験年数別】フリーランスエンジニアの月単価相場と年収目安
経験年数別の月単価相場
フリーランス市場での評価は、実務経験年数と強く相関します。
| 実務経験 | 月額単価の目安 | 案件の特徴 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 30万〜45万円 | 実装補助・テスト中心。選択肢は限定的 |
| 1〜3年 | 40万〜60万円 | 独立実装が可能。案件数が増え始める |
| 3〜5年 | 55万〜80万円 | チームリード・設計業務も担当可能 |
| 5年以上 | 70万〜100万円以上 | 上流工程・アーキテクチャ設計。指名獲得も現実的 |
実務3年未満での独立が手取りダウンになりやすい理由
経験1年未満はヘルプデスクやテスト案件が多く、月単価30〜40万円が基準になります。そこから社会保険料・所得税を差し引くと、正社員の手取りを下回る試算になります。もしあなたが「今より高い月収」を目指して独立する場合、経験の内容によりますが実務2〜3年以上が一つの現実的な基準です。
常駐とフルリモート、都心と地方在住で年収はどう変わるか
常駐案件は単価が高め。ただし経費も多い
首都圏のDX推進プロジェクトでは、常駐案件の月単価はフルリモートと比べて10〜20%程度高い傾向があります。企業が「コミュニケーションの即時性」と「情報管理」に追加コストを払っているためです。
シニアエンジニアの場合、常駐や業務遂行そのものを委託する準委任契約の月単価は70万〜90万円がボリュームゾーン。ただし通勤時間の機会損失・都市部の生活費・外食費を加味すると、表面上の年収ほど利益率が高くならないことも多いです。
地方在住×フルリモートで実質年収を最大化するには
実質年収を上げる戦略は、「地方在住(低固定費)×首都圏案件(高単価)」の組み合わせが有効です。総務省の『家計調査』に基づく試算では、首都圏から地方都市へ移住した場合、住居費を中心とした固定費を30〜40%削減できます。
| パターン | 月単価 | 月額生活費(概算) | 月次手残り(概算) |
|---|---|---|---|
| 首都圏・常駐 | 100万円 | 約28万円(家賃15万含) | 約45〜50万円 |
| 地方在住・フルリモート | 90万円(▲10%) | 約18万円(家賃7万含) | 約48〜54万円 |
ただし地方×フルリモートを成立させるには、「過去の実績」「特定領域の専門性」「リモートでのアウトプット能力の証明」が前提になります。経験が浅い段階でのリモート案件は企業にとっての管理リスクがあるため、低単価になりやすい傾向があります。まず首都圏案件で実績を積むことを優先しましょう。
フリーランスエンジニアの案件トレンド
1〜2年目のエンジニアでも十分に稼げる市場だった
これまでは還元率が低いSES企業が一般的でした。また売り手市場ということもあり、 実務経験が1〜2年程度でも、エージェントを通せば月単価40〜55万円の案件が容易に見つかるような環境でした。しかし2026年現在、生成AIの普及もあり、単純なコーディング業務の価値は徐々に減少していると言われています。
エンジニアの評価軸は「実装」から「事業貢献」へ
現在のトレンド1:「実装だけ」のエンジニアは単価減
コードの記述を主とする業務はAIやオフショア、近年のエンジニアの増加傾向から、経験が浅い層の競争率は上がりました。実務3年未満の単価は伸び悩んでおり、いわゆる『高還元SES』が一般的になってきたため、場合によっては正社員の方が手取りが多いケースも増えています。
現在のトレンド2:高単価を狙うなら特化スキルに幅をもたせる
シニアエンジニアの中でも高単価になると、技術力以上に「ビジネス推進力」が求めれる案件があります。
- 「技術選定」と「説明責任」: 単に動くものを作るだけでなく、「なぜそのアーキテクチャなのか」をビジネスサイドに説明し、合意形成を図る能力が必須です。
- 「自走」から「牽引」へ:「若手メンバーのコードレビュー」「開発プロセスの改善」「AIを活用したチーム全体の生産性向上」など、組織全体のパフォーマンスを引き上げる動きが求められます。
現在のトレンド3:リモート案件は応募が殺到、回避する人も
フルリモート案件の人気は依然高いですが、競争率も非常に高い状況とも言えます。その競争率の高さから、希望単価を下げて案件を探す方や、出社を前提とした案件を探す方も増えています。なお常駐(出社)のほうが単価が高いという傾向はみられず、あくまで企業側は案件に案件の内容に対して単価を決定しています。
フリーランス独立を判断する基準:資金・スキル・市場価値
【財務】独立前に用意すべき資金は最低6ヶ月分の生活費
独立直後は収入が途切れる、支払いが遅れることが想定されます。会社員時代には意識しなかったキャッシュフロー(現金の流れ)に耐えられるか確認してください。
□ 独立直後:固定費(生活費+事業費)の6ヶ月分以上を現金で保有している
独立直後やプロジェクトの終了時は、次の案件が決まるまで1〜2ヶ月の空白期間があることも珍しくありません。もしすぐに収入の予定がなくても心の余裕を保てるよう、現金を保有しておけると望ましいです。
□ 案件参画中:参画初月から報酬を受け取るまでの「無収入期間」に耐えられる
フリーランスの報酬は月末締め・翌月末払い(または翌々月払い)が一般的です。その場合、働き始めてから実際に口座にお金が入るまで2ヶ月程度のタイムラグ(無収入期間)が発生します。
□ 稼働不能時の所得補償(民間の保険など)の目処がついている
正社員と違い、有給休暇も傷病手当金もありません。インフルエンザで1週間休めば、その月の収入は確実に減少します。自分が倒れたら収入ゼロになるリスクを想定して、保険への加入も検討しておきましょう。
【スキル・実績】高単価を得られる実力があるか
資金の準備ができたら、次は「売るもの(スキル)」のチェックです。 フリーランスと正社員の決定的な違いは、「教育コスト」を誰が負担するかにあります。企業はあなたを育てるためではなく、初動から成果を出してもらうために高い報酬を支払います。
□ 技術選定やアーキテクチャの相談に自分の意見を持って応えられる
単に「言われた通りに作る」だけなら、より安価な人材やAIで代替可能です。「なぜその技術を使うのか?」「どう設計すれば保守しやすいか?」といったHow(どう作るか)の提案をできる人材こそが、市場で希少価値を持ちます。
□ GitHubや過去の成果物など、第三者が確認できる実績がある
職務経歴書の記載だけでなく、GitHubのコードやポートフォリオなど、実力の証明書を提示できると企業側とのミスマッチも少なくなります。
【市場価値】エージェント3社に面談して提示単価を確認する
今の自分はどのくらいの市場価値があるかを測るなら、プロの第三者視点を活用しましょう。まずは3社程度のフリーランス専門エージェントに面談を申し込み、具体的な案件名と提示単価を受け取ってください。
判断の目安:提示単価 ≧ 現在の月収 × 1.3〜1.5倍 に達していない場合、税金や社会保険料の自己負担を考慮すると、実質的な手取りが下がる可能性があります。
まとめ:将来設計をできる人はフリーランスでも成功する
フリーランスエンジニアの年収は、正しく設計すれば正社員を大きく上回る可能性があります。ただし「額面の高さ」だけで独立を判断すると、思わぬ自己負担がかさむリスクも潜んでいます。
この記事のポイントを3行で整理すると:
・ 手取りで比べると、フリーランス年収は正社員の1.3〜1.5倍の売上が「同等」の目安
・ 独立の適切なタイミングは実務3年以上・手元資金6ヶ月分・市場提示単価の確認後
・ 地方×リモートで実質年収を最大化するには、まず首都圏での実績を積む
ですが自分の市場価値がいくらかは、頭の中で考えていても答えは出ません。実際の案件を見て、はじめて現実が見えてきます。独立を迷っているなら、まずテックタレントフリーランスの案件を覗いてみてください。
「独立、気になってるけど一歩が踏み出せない」——その不安、一人で抱えなくて大丈夫です
✓ 同じスキルでも、手取りが変わる
エンド直・元請け直特化だから、中間マージンで削られない単価を実現。なぜか手取りが少ないのは、構造の問題かもしれません。
✓ 税金で失敗するかもを、一緒に潰す
確定申告・節税・税理士紹介まで、案件以外の不安も丸ごとサポート。知らないだけで損をする領域を、一緒に埋めます。
✓ 紹介して終わり、じゃない
定期面談・フォローランチで参画後も継続サポート。「次はどう動くか」を一人で考えなくていい環境があります。





